米国のトランプ大統領の公式仮想通貨(暗号資産)とされる「TRUMP」の価格が急上昇した。
2025年4月23日のロイターによれば、トランプ大統領が、TRUMPの購入額上位220人を夕食会に招待すると発表した動きを受け、TRUMPの価格が一時60%以上値上がりした。さらに上位25人には、「VIP」向けのレセプション(パーティーと思われる)も開かれるという。
仮想通貨TRUMPは、1月17日に発行が始まった。トランプ大統領の2期目の就任式が1月20日だったため、就任の直前というタイミングにあたる。公式とされるウェブサイトを確認すると、「唯一の公式トランプ・ミーム」と大きく書かれている。トランプ氏自身もソーシャルメディアTRUTH SOCIAL上で、このTRUMPを「超クールだ」と述べている。調べてみると、この仮想通貨の流通を主導しているのは、トランプ氏の企業グループであるようだ。
大統領の関連企業が大口保有
仮想通貨TRUMPを理解するうえで、公式サイトにある「トランプ・ミーム(meme)」という言葉が重要だろう。ミームは、インターネット・ミームから来た言葉だろう。この言葉は、ネットから発信されるジョークや流行、表現などを指す。そこから派生したのが、仮想通貨の一種であるミーム・コインだ。先端技術用語を解説する大和総研のサイトは、ミームコインを次のように説明している。
「ミームコインはインターネットを通して形成されたコミュニティがジョークや風刺として始めるケースが一般的です」
しかし、TRUMPは、ジョークでも風刺でもなく、明らかにビジネスを目的とした発行された仮想通貨だと考えられる。TRUMPの発行計画には、CIC Digital有限責任会社と、Fight Fight Fight有限責任会社が、この仮想通貨の80%を共同で保有していると明記されている。このうちCIC Digitalは、トランプ氏の企業グループであるトランプ・オーガニゼーションの関連会社のひとつとされる。
仮想通貨のデータを公開しているCoinMarketCapによれば、4月27日昼すぎの時点で、TRUMPの価格は日本円換算で2200円台となっている。しかし、就任式前日の1月19日の時点では1万900円台まで値を上げていた。発行時に価格が急上昇したものの、現在は当時の5分の1近くまで値下がりしていることになる。
仮想通貨TRUMPの公式サイトには、TRUMPの発行は「支持の表明」を目的とするもので、「投資」は目的ではないと書かれている。しかし実態としては、当初の勢いほどには、ぱっとしない仮想通貨を後押しするため、大統領自身が出席する夕食会が企画されたと考えられる。
注目度を換金する仕組み

この連載の記事
- 第335回 日本のコンテンツ産業、海外市場で“半導体超え”──20兆円市場の鍵を握るのはマンガか
- 第334回 証券口座乗っ取り、自衛しないとまずい
- 第332回 “ブロッキング”議論再燃 オンラインカジノめぐり
- 第331回 「タイミーだけのお店」登場──スキマバイトは飲食業を救う?
- 第330回 任天堂の工場が米国に? どうなるトランプ関税
- 第329回 ドローン航路、埼玉と静岡で開通 安全性がポイントに
- 第328回 オンラインカジノ クレカ決済が依存の入口に
- 第327回 「SNS規制に反対します」──批判集まった“情プラ法”とは
- 第326回 いよいよ日本でも取り扱いが始まる“ステーブルコイン” 電子マネーに代わる可能性も
- この連載の一覧へ